2005年10月28日
地球上どこでもインターネット

Wiredが伝えるところによると、英国のインマルサットは数週間以内に二機目の第四世代通信衛星を打ち上げるそうだ。この衛星が稼働すれば、地球上のほとんどの場所でブロードバンドサービスと音声通信サービスが利用可能になるという。 同社は来2006年に“ブロードバンド・グローバル・エリア・ネットワーク”(BGAN)と称するサービスを開始する。今回の衛星はその中継を担うもので、ノートパソコン大の接続端末を携帯すれば、地球上のほとんどの場所で、最高492Kbpsでインターネット接続を利用できるようになる。カバーエリアは地球上の陸地の88%。

もともと、アメリカでは都市から離れたところに暮らす人々にも、衛星通信によるインターネット接続が提供されてきた。コストは、下り512Kbpsで月額50ドル程度。弊社デジハウンドのニューメキシコ本社(!?)も、このような衛星接続利用だ。ただ、そのパラボラアンテナは直径が1.5mほどもある巨大なもの。それが、インマルサットが計画しているサービスでは、携帯可能な機器で可能になる。

こうした通信インフラが整備されることは、人間にとって二つの方向性がある。一つは、今迄インターネットと縁のなかった地方に暮らす人々が、より手軽に、一足飛びで世界の情報網の一端に接続されること。既に衛星利用の接続をボランティアによって提供されているアフリカの山奥の村などがあって、農業や医療の分野で、多くの恵みをもたらしている。ただ、情報から隔離されることで保たれてきた地域の特色は、今後はそれを継承する強い意志によって保たれることになるだろう。

もう一つは、ジャーナリストや研究者など、職業上高速通信を必要とする人々が、何のストレスもなく現場から情報を受発信できるようになること。一次情報の発信と膨大なデータへのアクセスがあらゆる場所から可能になる。地上の通信施設によらないので、災害にも強そうだ。遠隔医療と連携させれば、現場の治療行為をより高度なものにできるし、ジャーナリストなどによる状況発信が救援を円滑にするかも知れない(情報を受ける側の能力に左右されるのは、ニューオリンズの水害でも明らか)。

北米ではインマルサット社の他にも、ヒューズネットワークシステムズ社が、2006年から類似の衛星利用で下り30Mbpsの接続を提供すると案内している。

あらゆるモノがICタグでIDを示すようになり、Wi-Fiで全てが無意識のうちに接続される ─ 誰もが高度なことを成せるようになることは意味せず、すべからく、道具が使う人を超えることはない。だが、道具によって人は生産性を飛躍的に向上させ得る。既存のビジョンにおける生産性を遥かに超えることを可能にするそうしたインフラストラクチャを前提とすると、そうした道具を得た人は、どのような未来を織りなして行くだろうか。

ウェアラブルコンピュータとどこでもWi-Fi高速接続。その社会で試され続けるのは、情報提供能力と、情報収集能力。隣にいる人よりも地球の反対側にいる人のほうが相応しい場合、物理的な距離を無視して一緒に物事を成し遂げることができる環境が、さらに充実して行くのである。
by DIGIBEAR