2009年12月07日
自治体向けIT大手参入 ─ 「クラウド」使いシステム共有

日経朝刊一面トップが、上のタイトル。NECや富士通が各地方自治体の情報システム運用に、一斉に参入するというニュースだ。

確かに節税にはなるだろう。システムがある程度共通するから、使う側としても戸惑いは減る。だが… 実際には、バラバラに開発してきたこれまでも、大手はシステムの根幹にあるデーターベースを安値落札するなどし、その結果、多くのシステムを自動的に占有してきた。これがクラウドに吸収されると、新規に開発する案件の余地はなくなる。主立った自治体は既にシステムを擁していて、それをクラウドへ移行する。そこに、IT化が遅れていた自治体が加わり、IT化が促進される、そこまでは良い。が、次に危惧されるのが、そこで構築されたシステムの硬直化だ。

例えば、先の事業仕分けの際、財務省電子申請システムについて、財務省は、やがてはそうなるだろうと想定される納税者番号への対応についての質問に、現行システムに納税者番号の項目がなく、納税者番号制度が始まるならそれなりのコストがかかると答えていた。もうお分かりだろう。これこそが、官公庁ITシステム(の発注仕様)の欠陥なのである。

現在あることを満たすようにはするが、先々どうなるかを勘案しない。データベース上の各データは必ず、混在しないように一意性を持たせてある箇所があるはずで、本来、そこを上手に利用すれば納税者番号を導入するのにコストはかからない筈なのだが、聞きようによっては「敢えてそうしていない」とすら聞こえるから、首をかしげざるを得ない。

クラウド化にあたって、そうした将来の変更への適応性や拡張性を持った柔軟なシステムを、参入業者なり携わるエンジニアなりが構築すれば良いのだが、そうなっていなかった場合、膨大な利用者を抱え込んだシステムがまるごと、改変コストを喰う金食い虫になりかねない。目先は安いが、先に大きな落とし穴のあいたシステムである恐れが、否定できないわけだ。

そうならないためには、データーベースやシステムを熟知したSEによる第三者機関などが十分なアドバイスを官公庁や自治体に与えたり、大手業者の構築するシステムを設計段階において検証するなどするのが良いだろうと思うのだが、むろん、そんな動きはない。

さらに言えば、各業者が作るそれらに、第三者機関などが間に入ってデータの互換性を持たせた方が良いのではないかと思う。最低限、データーベースの仕様が統一されるなら、データの移植性が確保される。例えば、引っ越しをしたからといってデータを入力し直す必要がなく、データ移動時の入力でのケアレスミス防止につながる。

クラウドのサーバー側に求められるトラフィックや処理パワーは、既に中小の参入できる余地を奪い去っている。大手にしか出来ない分野にこの国が突入するにあたって、納税者番号制度一つですら対応できない(していない?)程度の将来設計で歩み出して欲しくはないのである。
by DIGIBEAR