2005年11月22日
日経バイトが休刊

そぉいえば、私が読み出してからもずいぶんと経つなぁ、と感慨深いのが日経バイト。ジェリー・パーネル氏の連載“混沌の館”が面白いからと、読み続けて15年も経つだろうか。 もともとは米国のBYTE誌の日本語版だが、内容は日経独自色が強かった。他の日経コンピュータ関連雑誌にオーバーラップする内容が、他誌の存在を食っている面もあり、販売戦略上は休刊したほうが他誌で稼げるのかも知れない。一方、バイト一誌を読んでいれば済むと思っていた読者の立場からすれば、日経ネットワークやITプロフェッショナルといった複数他誌で情報が分散し、ゼネラルに物事を見ようとすると出費がかさむことになる。

もっとも、深く広くのバイト誌のスタンスは、日経だけでは編集者のセンスが追いついていなかった。彼国ではBYTEやWIREDといった至近の未来が垣間みれる雑誌は、WWWで継続している。一方、日経は情報が古くなるのも厭わずに紙媒体に頼っている。いや、日経だけではない。日本の出版は本が読まれず雑誌が売れないといいながら、WWWでの情報提供へ変貌できずにいる。

雑誌のように一定のボリュームで一定の区切りをもって編纂する手法が継続されると、WWWではどうしても一部情報は発行周期に合わせて古くなったり、逆に掘り下げの時間が足りずに不満の残る記事になる。WWWで情報をリリースすることの利が損なわれるのだ。その大前提を無視して雑誌のような流儀を通そうとするから、WWWでの雑誌的情報提供はことごとく失敗する。これは、新しい革袋に古い腐りかけの酒を詰める結果だ。

私は日経BYTEの休刊の報に早速、米BYTEのサイトに購読契約した。目的は言わずと知れたジェリー・パーネル氏のChaos Manor。今にして思えば、もともと英文で読んでいるべきだったのかも知れない。もはや、雑誌出版の分野では、翻訳出版している暇に情報が腐るのだから、成立は難しい。国境を考えず言語の別で言うのであればまだ価値もあるだろうが、それとて、WWWで稼げる速報性は活かすべきだろう。

さて、ところでそのパーネル氏の最新号記事は、有名なAllchinレポートの蒸し返しだ。この時期にこのレポートを蒸し返して休刊というのは、なんとも感慨深い。Windowsの危機という側面を知れば知るほど、これ以上MSと付き合っても未来がないように思える。そして、そのMSのソフトウェア、特にOffice一族なんぞにご執着のこの国の実態が、そうだ。

非常に静かにではあるが、シンクライアントの潮流も力強く始まっている。パソコン黎明期のように、今また、「早く舵を切るほど早く馴染める」転換期に入っているのだ。そうした転換期にあって不変のものは、素ッピンのテキストデータ。CSV(カンマ区切りデータ)やTEXTは環境を選ばず取り込めて、柔軟に環境変化に対応するプリミティブな生物のような存在だが、それらこそが、実は最後まで活きるのではないだろうか。
by DIGIBEAR