2010年12月15日 22時37分 | カテゴリー: 総合

隣組のばあさんの謎

知的満足感なんてえなあ、このところずっと無縁なんだが、なにいくら本を読んだって片っ端から忘れちゃうしね、ま、だから同じ漫画を何度読み返しても結構楽しかったりするからいいんだけど。でもきょうはちょっとうれしかったな。というのも一昨日だったか、中国人のツィットを読んでいて「朝起きたら家の前にみしらぬばあさんが門を見張っていた」ってのがあって、どうやら当局からにらまれている人権活動家らしいんだが、そのツィットはすぐ、仲間らしい別のツィットで「美人だったか?」とかそっちのほうにいっちゃったんだ。でも、なんだかヘンな気がした。人権活動家が警察に見張られているならわかるが、変な婆さんに見張られていたら自分ならそっちの方がよほど気持ち悪い。でも、この人達は平気なんだなあ、と。ずっとそれが「なぜかいな」と引っかかっていたら、何清漣さんのツィットに「HeQinglian He Qinglian 与江胡两人相比,习近平更看重居委会的维稳作用。拙文“千年不变的社会单位:从什伍里甲制到居委会” http://tinyurl.com/27bvdde 分析了这一制度继承了使“奔亡者无所匿,迁徙者无所容”的专制特色。欢迎围观。」というのがあって、これを読んでたまげた。なんと町内会の隣組による監視体制、というのは中国では2000年の歴史がある、というのだね。で、反体制活動家はそのこと自体にはまったくおどろきゃしないのだ、ということなんだ。うーん、びっくりしたけど「隣組の婆さんを中国人はなぜ怖くないのか」という謎は解消した。疑問を持つのも早いが解決するのもこんなに早いのにはびっくりした。ツィッターおそるべし。これを体験談や書物で知ろうと思ったらなかなかに大変だもの。



一昨日、中国民主活動家が「朝起きたらへんなおばちゃんが家の前で見張り」というツィートがあった。警察よりコワイと思ったがその正体がこれらしい。何清漣氏論文;RT @HeQinglian: 『千年変わらぬ社会組織;什伍里甲制から居住委へ』

何清漣氏論文; @HeQinglian: 『千年変わらぬ社会組織;什伍里甲制から居住委へ』
①居住委は中国都市における底辺の基本住民組織で文化大革命の当時、悪名高かった”纏足査察隊”(*小さい足のおばはんたちによる糾察隊、の意味)の後身。(続)
② 悪名高かった”纏足査察隊”(*は絶大な権限をもっていたが)その権限を弱めて改革開放以来ゆるんだ社会のコントロール政策の一つである。それがこのところ長年の眠りから醒め、又活躍しはじめている。(続)

③ 末端の秩序維持(維穏)の向上のため、中共中央官庁、国務院は11月30日『都市における居住委員会の仕事を強化することに関する意見書』を発表し、経費、人員報酬、設備および情報化建設などの財政予算を明確に規定した。
④極度に居住委が社会のコントロール装置だった毛沢東時代ですら、組織的に財政体系に組み込まれることはなかった。これは中国政府が居住委を”人民戦争”方式で社会管理強化することを意味する。(続)

⑤ 近来、居住委は一歩一歩『糾察隊』として社会管理システムに復帰してきた。習近平は2008年に北京オリンピックの組織グループリーダーとして『五輪安全保障モデル』をつくり、高度な技術と社会機構をもって”6つの網”を張り巡らせた。(続)

―街面防控网、社区防控网、单位内部防控网、视频监控网、区域警务协作网 和“虚拟社会”防控网之外,还动员“志愿者”如街道治保积极份 子、单位“门前三包”人员等“社会力量”,
何清漣氏論文;@HeQinglian: 『千年変わらぬ社会組織』⑥6つの網、とは街(タウン)、社区(団地)、職場、webカメラ、区域警務共同網とバーチャル世界の網で活動者は”前の道路を清潔にする隣組”の”積極分子”のような”ボランティア”によって構成される。(続)
用“人民战争”的方式消灭一切可能 的反对力量。这种“人民战争”方式,就是师法毛泽东时代发动群众的对敌斗争的故智。居委会工作人员文化水平不高,但按政府要求管治人的野蛮与服从却正好符合暴力治国的需要。
何清漣氏論文;@HeQinglian: 『千年変わらぬ社会組織』⑦ 即ち、毛沢東が民衆を動員して敵に当たらせたやり方に習ったものである。居住区の工作員の教育レベルは低く、しかしそれだけに政府の要求に対し忠実で暴力的に統治するにはうってつけなのである。(続)





今年,居委会还与时俱进地获得了鉴定精神病患者的资格。按照2010年5月30日《瞭望》新闻周刊依据官方研究所作的报道,中国有精神病患超1亿, 重症人数逾1600万。中国的基层组织街道办、居委会(村委会)与乡镇政府今后有“排查”与“鉴定”精神病人的资格,因为被定为精神病高发人群的主体是长期失业者与贫困者。
何清漣氏論文;@HeQinglian: 『千年変わらぬ社会組織』⑧ 今年、居住委は精神病患者を鑑定する資格を与えられた。2010年5月30日『瞭望』誌によると政府の研究所は「中国の精神病患者は1億を超え、重症者は1600万人であり(続)
何清漣氏論文;@HeQinglian: 『千年変わらぬ社会組織』⑨ 居住委と村委員会、郷鎮政府(*町村役場)には今後、精神病者を調査、鑑定する資格を授与する」、とある。(続)


最近,在一篇题为“居委会六十年流变”的文章里,开篇就将居委会称为“是新中国成立后城市基层群众自治组织的主要形式”,这说法显然只注意了其名字的“创新”,而忽视了居委会与村委会制度本质上与明代的里甲制(或称保甲制)相同。
何清漣氏論文;@HeQinglian: 『千年変わらぬ社会組織』⑩ 最近、『居住委60年の変遷』なる文章に「居住委は新中国設立後の基層自治組織の主要形態」と。この言い方で注意すべきは”創新”というところで、居住委は実は明代の里甲制(保甲制)と同じだという点である。(*(*什伍里甲制についてはrelated:www.sal.tohoku.ac.jp/~n-yoshi/hestia/archives/no6/kurasawa.pdf 里甲制 に大論文あり)


明开国皇帝朱元璋认为游民是社会不稳定的根源,实行里甲制与路引制度。里甲制规定,“以一百十户为一里,摊丁粮多者十户为长,余百户为十甲。甲凡十人。岁役里长一人,甲首一人”。
何清漣氏論文;@HeQinglian: 『千年変わらぬ社会組織』⑪明を開いた朱元璋は遊民が社会不安の根源であると見て、里甲制度を採用。全国の民衆を110戸を1グループとし、その中で裕福な者1(里長戸)に対し、それ以外10戸(甲首戸)を合わせ、11戸を納税・労役の最小単位とした。110戸を里、11戸を甲と呼ぶ。(続)
用法律规定“农业者不出一里之间,朝出暮入,作息之道相互知”。凡人员远离所居地百里之外,都需由当地政府部门发给一种类似介绍信、通行证之类的公文,叫“路引”,
何清漣氏論文;@HeQinglian: 『千年変わらぬ社会組織』⑫また法律で「農業者は1里(*500m?)内の互いの出入り、労働休息時を互いに知り、居住地100里以上離れる時は”路引”という政府の通行証が必要」。(*农业者不出一里之间,朝出暮入,作息之道相互知←これ不明(^^;)、適当訳ゴメン)(続)

若无“路引”或与之不符者,要依律治罪。这种“路引”实际上就是离乡的证明,与“文革”及“文革”前由单位或者居委会、人民公社的生产队的“介绍信”性质完全相同,毛时期,如果没有介绍信,既不可能住旅馆,也会被当作可疑分子收治。
何清漣氏論文;@HeQinglian: 『千年変わらぬ社会組織』⑬ もし”路引”がないと罪に問われた。この”路引”は文革時、それ以前の職場・居住区委、人民公社による”紹介状”と全く同じものである。毛時代にはこれがないと宿に泊まれず、疑わしい者として逮捕される場合もあった(続)。

中共建政初期,曾将民国时期的保甲制度当作“反动制度”加以摧毁,其实中共实施的城市居委会与农村的人民公社与民国时期的保甲制度同出一源,均效仿明朝的里甲制,在人身控制上较民国保甲制度更为严苛。
何清漣氏論文;@HeQinglian: 『千年変わらぬ社会組織』⑭中共創設期には民国時代の保甲制は反動的だと廃止されたが、実は中共の実施した居住委や農村での人民公社と保甲制は同じ源であり、むしろ明時代の里甲制に近く、人々の自由を制限するという点では保甲制より過酷なものであった。(続)


追根溯源,明朝的里甲制源自始于中国古代的什伍里甲制度。早在春秋时期,齐国就推行什伍制,十家为什,五家为伍,什有什长,伍有伍长,负责闾里治 安,一旦发现形迹可疑者要及时上报,使“奔亡者无所匿,迁徙者无所容”(《管子.禁藏》)。
何清漣氏論文;@HeQinglian: 『千年変わらぬ社会組織』⑮ 明時代の里甲制は古代中国の十五里甲制に始まる。春秋時代(紀元前770年〜前403年)までに斉の国がはじめ、逃亡者のかくれるところを無くした。(*什伍里甲制についてはrelated:www.sal.tohoku.ac.jp/~n-yoshi/hestia/archives/no6/kurasawa.pdf 里甲制 に大論文あり)



秦国在商鞅变法后,实行什伍连坐法,邻里之间互相监督,互相纠 察,一家有罪,什伍连坐同罪。后代里甲制即由此发展而来,是封建专制时代控制人身自由的基层组织形式。
何清漣氏論文;@HeQinglian: 『千年変わらぬ社会組織』⑯秦の商鞅の新法以後、連座制が適用され隣の”里”との間同士、互いに監視させあった。一家に罪があれば5人組仲間も連座同罪とされた。後になってさらに発展して封建時代に人の自由を制御する基本組織形態となったのである。(続)

在这种以控制人身为目标的严密的居民组织系统之下,人口的自由流动几乎不可 能发生。于统治者来说,这不仅保证了社会秩序的稳定,也使帝国的赋税、徭役、兵役政策有实施基础。
何清漣氏論文;@HeQinglian: 『千年変わらぬ社会組織』⑰このような人間の行動を制限する居住組織のシステムでは人間の自由な流動はほとんど不可能である。よって統治者からみればこれは社会秩序の安定と、帝国の課税、労役、兵役などを実施する基礎になった。(続)

外国人一直不太理解一点:为何中国政府每逢政治敏感时期,就将异议者与维权人士送回原籍?这只有生活在中国这种颇有帝国风采的国家的人才能理解。
何清漣氏論文;@HeQinglian: 『千年変わらぬ社会組織』⑱ なぜ中国政府は政治的に”敏感な時期”になると、異議を唱えたり、人権擁護派の人士を”原籍地に送り返す”のか?ということを外国人はずっと理解できずにいる。これは中国のような”帝国”の住民にして初めて理解できることなのである。(続)。
与文化中心多元化的联邦制美国不同,中国、法国、日本这类国家的经济、文化呈梯级发展。即使在法国、日本这种完全实现了自由迁徙的完全市场经济国度,其中小城市的文化开放度也落后于大都市巴黎与东京,
何清漣氏論文;@HeQinglian: 『千年変わらぬ社会組織』⑲文化の中心が多元的な連邦国家の米国とちがって中国、フランス、日本などの国家の経済、文化は段階的に発展してきた。仏や日本など移動の自由な完全な市場経済を実現させた国でも小都市の文化の開放度は大都市のパリや東京に劣っている。(続)
中国的大都市与中小城市之间的落差更大,异议人士一旦被送回相对闭塞的原籍,很难得到周围人群的认同,加上居委会与村委会的强管制,很容易被置于一种孤岛状态。何清漣氏論文;@HeQinglian: 『千年変わらぬ社会組織』⑳中国の大都市と中小都市の差は更に大きい。一旦、異議申し立てした人々が原籍に戻るという事は、周囲の人々の理解を得られず、居住員かいの強制管理下に置かれ、一種の孤島に島流しに会うとおなじことなのだ。(続)
比如在世界人权日那天,香港记者试图到毒奶粉受害人赵连海居住小区采访,就被一些臂缠“居委会”袖章的人士掌掴和殴打。
何清漣氏論文;@HeQinglian: 『千年変わらぬ社会組織』(21)例えば、世界人権記念日に、メラミンミルク事件の趙連海が住んでいた居住区を取材しようとした香港の記者は、ずっとつきまとってはなれない居住区の腕章を巻いた連中に殴られた。(続)
强化居委会功能的目的是“维稳”,这一使“奔亡者无所匿,迁徙者无所容”的制度,实在与市场经济体制所必需的自由迁徙完全相悖,
何清漣氏ツイ文;RT @HeQinglian:(22)居住区委の権限強化は’秩序安定”、つまり原籍地を離れた人間が隠れるところを無くし、”流れ者”の居場所をなくす制度なのだ。 これは市場経済が必要とする自由な移動とは完全に相容れない。


也因此,我有点担心废除户口制度的呼吁可能会因为“维稳”的需要而不能践行。
何清漣氏ツイ文;RT @HeQinglian:(23終)以上によって、私は今年3月の13新聞共同の「戸籍制度撤廃を」のアピールは、「社会安定」の必要性の下で実行ができないのではないか、といささか心配なのである。(原文はhttp://voachineseblog.com/heqinglian/2010/12/localcommunityinchina/)

(「朝、おきたら婆さんがうちの門見張っていた」 RT @L5d: 一开门,发现一个老太太贴着我的门站着)とのツィートの影には、このようなオソロシイ2000年以上の伝統を誇る中国の保甲/里甲制度が隠れていたのか。何清漣さんに感謝です。

執筆者: Jun