2014年11月09日 00時38分 | カテゴリー: 総合

東京獅子博物館のこと

おっと、わすれぬうちに「東京獅子博物館」のことを書いておこう。このあいだの奥多摩ー大月ツーリングで北秋川渓谷の奥まったところ、住所で言うと東京都西多摩郡檜原村樋里8707-1、という五日市から約20分から30分ぐらいのところに奇妙な獅子頭と赤い看板がでている。

自分はあの日、「払沢の滝」を見るつもりでバイクを駐める場所を探しているうちに、林道めいた登り坂がおもしろくてどんどん上に上がっていってしまい、ついに「時坂峠」というよほど奥多摩の山に詳しい人でもなければしらなそうなところにでてしまった。峠には茶店があったがウィークデーで当然やってなかったが、そこからは大岳山、御岳につらなる山々がなかなかの壮観であった。

これはなんだ、と山奥でびっくりしたで、バイク乗りというのは常に先へ先へと行きたいわけで、元の道は戻りたくない。どこへ抜けるのかさっぱりわからないままにこんどは林道を下って行くと上手い具合に小岩というひなびた部落に降りられた。それはいいがそこから南の周遊道路の数馬の方に行くにはどういっていいかわからない。このへんだともうナビも怪しいし、もっていた地図は古すぎた。

で、行ったり来たりしてるうちに通り過ぎたのがこの博物館前。「東京獅子博物館」という標識だ。檜原村はれっきとした東京都だから「東京」はまあいいとしても、「獅子」とはねえ。好奇心を痛く刺激されてヘルメット脱いで階段をあがって尋ねてみた。

すると電気がついて、なかから私より年上の上品な紳士が現れ、なんだか面食らった。麻布のお屋敷のご主コレクションを説明する峰岸館長人みたいな感じで、がさつまるだしのジジライダーとは品格が違うw。で、早速300円の入館料をお払いして、さほど広くはないがその分、ぎっしりとつまった「お獅子」、つまり「獅子頭」のコレクションを拝見した。岩手の鹿踊りのから、巨大なの、ちいさいの、陶器でできたの、真っ黒いの、ピンクの花笠…なにがなんだかわからない。 かの紳士は峰岸三喜蔵氏とおっる館長とわかった。で、こちらがどうやら面食らっているのをみて説明してくださった。なるほど、北は北海道から九州まで、(沖縄のシーサーももちろんあったけど)、全国に数千におよぶ獅子舞が伝えられており、その東日本に広まったのは500数十年前に奥多摩の3兄弟が広めたらしい、というお話だった。

奥多摩の人が全国に獅子舞を、それも540年前というと、戦国時代ですよ。織田信長誕生が1534年、といえばそのころでしょう。そんな全国で大戦争をやってる最中に呑気に獅子舞を全国にひろげた奴がいたって?ありえないw。

しかし、説明を聞くうちになんとなくわかってきた。当時、「獅子舞」はめちゃめちゃハイカラな祈りと娯楽をあわせたポップな文化だったんだね。娯楽もテレビもインターネットもない時代にその舞を踊る人間はよそからきた「神」の化身であり、スターだったんだ。そしてその踊りを習って流派のように広めていったという。兄弟は山伏の姿でひろめたらしい、というのだ。

ふーん、それならピンと来る。つまり戦時諜報員をかねていたのだろう。ラッパ、スッパ、忍者、といろいろ呼ばれるが、つまりはそうした役割をもって全国を歩くのなら、伊達や酔狂でおまつりさわぎを広げていったのとはだいぶ違う。それならおもしろい小説の題材にもなるようなお話だ。 もっといろいろ知りたかったが、それ以外の展示物もいっぱいあるのでその説明もきいているうちに時間もだいぶたって、そもそも今日はここを尋ねる目的ではなかったから適当に切り上げて、峰岸氏が本でも書いていたらそれを買おうとおもったが、なんと一冊1万円とか5000円とかするので、手が出なかった。バイクのガソリン代しかもっとらんもの

で、帰り際にどっちの方角に抜けたらいいか伺うと、なんと数馬に抜けられるという。この土地生まれの同氏がいうのだから間違いない。お礼を言っとおりすぎそうになったがて、最後に写真を撮っていんぐれすポータルの申請をだして、部落の西に向かって奥へ奥へとバイクをはしらせて、まるで人気のない道になってこころぼそかったが、ちょうど道の落ち葉を清掃しているおばさんがいたので、もう一度きいてみるとたしかに数馬に行けるというので「鞍掛峠」だか「藤原峠」だか判然としな山をこえて数馬に通じる奥多摩周遊道路にでられたのだった。

いつか機会があったら、またお尋ねしたいものだ。そもそも博物館というのはまさに同氏のような個人コレクターが自分の収集品をみせたいから自宅の一室ではじめたのがその起源でもあり、いまだにロンドンなどにはそういう「博物館」が何百とある、ときいたことがある。 自分の山の木を切って材木にして、自分のコレクションをみせたいから「博物館」をつくってしまったという峰岸氏こそは、よっぽどどっかの自治体が「隣の県や市がつくったから、おれらもつくらねば」とつくった博物館・美術館よりその精神において格上なのである。

★東京獅子博物館のリンク

付近の林道。赤線がジジのたどった道。2014ツーリングマップルでも、ろくに書いてないね。ただしトレールバイクでないとだめ。

地図には通れないようにかいてあるが、実はとおれる林道

執筆者: Jun