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2019年05月15日 20時03分 | カテゴリー: 飛行機

YS11。。そのクライム

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     (但馬空港 懐かしきRW01/19 退役YS)
 余部灯台への道中で但馬空港へ立ち寄った
かなりの山道を登った頂点の平地にあり、農道をベースに拡張したらしい。
1200mの滑走路は神奈川の厚木と同じ向きで01/19。山陰の複雑な気象と山間部の影響で悪天が多く稼働率が低かったので01側にローカルでは珍しいILS(Instrument Landing System.着陸誘導装置)を設置した。

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ILSが設置されたRW01(南)

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ビーチのエアロコマンダーがあった

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ライカミング水平対向空冷6気筒350Psで乗員込み11名を運ぶ

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RW19(北側)を見る

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 ここにはANAから退役したYS11があった。福岡と壹岐のラインにを退役、2011年にここまでのラストフライトだったという。RRのターボプロップのパワーは3060shpとある(Sはshaft、つまり軸出力)。あの細いエンジンナセルで重量は350Kg程。さすがガスタービンだと思う。私のランクルの6気筒エンジンは130Psで300Kgある。しかしYSで育ったパイロットの友人によるとパワー不足が目立ったという。モノコック構造ではあるが戦後初の航空機製造という技術的背景で安全率を見込み重量増加になったらしい。

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      (POWER/weight C46比較云々)
 バイク出身の私はなんでもパワーウエイトレシオで見る。浜松で双発輸送機のC46に乗ったことがある、レシプロ最強と言われたR2800/2000Psの双発で重量はYSより一割ほど軽い。YSは一割重いが出力は5割増し。。なら活発に飛びそうだがアンダーパワーとは何でだろう。。これはまったくの推測だがエンジンの出力特性ではないだろうか。RRのダートは15000rpm(回転)で3060Sph。対するR2800は2000Psを2600rpmで出す。低回転からの全域に亘ってのパワーはR2800の勝ちだろう。例えは悪いがGTRの280Psでは50人乗ったバスを山には運べないが、いすゞの120Psなら楽勝である。またロータリーエンジンの加速はよくてもトルク感のなさとか。。おそらくレシプロの重いクランクが牛のようなトルク感を出すのではないか、その代わりR2800はエンジン単体でなんと1㌧を越える。。

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R2800ダブルワスプのC-46で私の初フライト

後列の長身イケメンが私。浜松基地から富士山往復の予定が強風の揺れで全員ギブアップという意気地なさ。ガキどもの戦闘機パイロット願望が遥かに遠のいた。

     (カナダのHS748 鳥取へのYSフライト)
 カナダでガソリン輸送業務でドラム缶を満載したフォッカーHS748に乗ったことがある。同じくRRダートの双発でYSそっくりだった。重量はやはり一割軽かったが成功作だという、どんな飛びっぷりだったのだろうか。。
 YSには鳥取まで日産4W73という、とんでもないトラックを買いに行くとき羽田から乗った。乗客は5~6人で高度は3500m程度だから富士山や太平洋沿岸の海岸や市街地が良く見え、あちこち席を移動して車掌さん?に呆れられた。そのうち高知空港への到着時間のアナウンスがあったから慌てた。そういえば羽田に2機のYSが並んでいたっけ。。乗り間違い(笑)を観念して高知から鳥取までの径路を思案していたら見慣れた大山(ダイセン)の山が見えてきた。。やはりアナウンスのミスだと安心した。鳥取空港での初対面に羽田や成田のように心配し、4x4マガジンでも携行しますからと電話したら笑われた。空港へのファイナルの旋回の窓から、電話で聴いたその方の黒のハイラックスが見えた。。降りて対面して見ればサッシ一枚ですぐに県道に出た。YSはそのまま高知空港に向かう便だったという顛末で、慌てた私の小心が情けなかった。。

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鳥取からドライブした無謀な買い物。日産キャリア4W73改
電電公社払い下げの災害時の無線基地局となる移動無線車。まだサイレンと赤色灯が装備されていた。この時点でキャンピングカーとして個人登録できるのか不安いっぱいだった。

      (CLIMB。。クライムという別世界)
 とまあバイクの感覚で、飛行機の飛びっぷりを類推しても当たらないだろう。YSで育ったキャプテンの友人からYSの分厚いマニュアルを見せてもらった。エンジン始動から滝寝具(タキシング、地上滑走の傑作な変換だった)の手順からCLIMB(クライム、上昇)のパートがある。ここで初めて、そうか空に上がって行くんだった(笑)と感慨に耽る。つまり重量の全てを支えてくれた地面がなくなり、ここからはパワーをふり絞って自重の全てを支えなければならない。バイクや車と決定的に違うのがここである。地上を走るものは自重を地面に任せ、パワーをすべて推進力に振り向けられる。対して空を飛ぶものは主翼に空力的な抵抗を持たせ揚力を得るため、パワーをふり絞らねばならない。空気抵抗には殆どの人が実感を待てず、R2800の先端についたプロペラを扇風機のごとく(空転)させるために、なんで45000ccもの18気筒2000馬力という途方もない馬鹿力が要るのか理解できない。通常の経験での大気の抵抗の実感は僅かなものでしかなく、それが速度をましてゆくと衛星や小天体が大気に突入するさい、激しい光を発して燃え尽きるという事実に驚愕する。大気は予想外に濃密でそれ故に翼の構造でそれに乗れるし、その際の強大な抵抗に打ち勝つ途方もないパワーを必要とする。       
 結局航空機というものはとてつもない乗り物であり、その特性をクルマやバイクの概念では推し量れないことが分かる。同時に舗装された路面に自重を任せて走る乗り物が、慣性でかなり走ることを含め、いかに楽をしていることかと思う。それが急速に電化されている実態を想うとき、しかしそれが航空機や船舶にまで及ぶだろうかと思う。特に航空機の電化は、ガスタービンに比べ圧倒的に重いモーターと、さらにそれの電力源たるバッテリーの途方もない必要数と重さは絶望的であり、今の人類の英知と方法論では航空機の電化は当面無理ではないかと思う。
     (P2J搭載GE改  3450Ps さらば繊細なYS) 
 民間のYS11はとうに退役したいま、僅か自衛隊に数機残るのみ。電子機器搭載に対応するためP2J対潜哨戒機のGEのエンジンに換装したものがあり、450PsほどパワーアップされRRのダートより図太い音がする。やはりRRではパワー不足だったのだろうか。。
 今となればYSも美しく見える。プロトタイプより上反角を増したそのフォルムは、ピンと張った上反角ぶりが、ゼロ戦や隼のそれを連想する。そのどこか哀しい繊細な美しさは、ああ、やはり日本機だなあと思う。

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執筆者: kazama

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